「草の根無償資金の調査業務から得られること」
代表理事 永岡 宏昌
(2002年9月・会報第20号より)

当会がケニアにおいて実施している活動には開発協力の事業のほかに、日本大使館が供与する草の根無償資金に関する調査業務があります。草の根無償は、政府開発援助(ODA)のうち無償資金協力の小規模なもので、住民団体やNGOなどに供与されます。資金を供与された事業が円滑に実施され、的確に受益者の役に立つことや、住民団体の事業実施能力が向上することを目的として、調査が行なわれます。

調査業務には、団体が申請した案件についての実施可能性調査と、資金が供与された事業のモニタリング業務とがあります。実施可能性調査では、申請団体を現地訪問し、事業のニーズ、申請者の意欲と実施能力、行政機関の協力姿勢、住民の参加度などを確認。可能性が高いと判断される案件について、申請書内容の充実、添付書類の追加などを助言します。また、モニタリング業務では、資金供与を受けた団体が、大使館との合意に沿って事業を実施しているか、事業報告書・会計書類が適切に作成されているかなど、数度にわたる現地訪問などをとおして確認します。

1998年からこれまでに実施した案件は19件(うち5件は、実施可能性調査とモニタリング業務を共に実施)になります。事業実施団体である当会にとって、調査にあたり、さまざまな団体が作成する申請書を熟読し、申請者と話し合う機会を持てること自体が貴重な機会といえます。さらに、事業実施に関与し、時として予想外の問題に対峙することは、当会の活動とは異なる開発の現場を学び、事業実施・管理の能力強化につなげる機会でもあります。教室建設、図書館活動、肢体不自由者のリハビリテーション施設などの貴重な経験をしてきました。

この業務を通してケニアの人々の開発の底力を感じることが多々あります。特に開発の専門家ではないのですが、自分が属する地域社会のために、住民団体を組織して真剣に取り組む人がいました。要求が厳しい草の根無償の申請・実施・報告を高い水準でこなしている人に出会いました。一方、専門家の組織といえるNGOのような中間の団体が資金を受けた案件のほうに、事業実施がずさんなことがありました。住民の協力を得られないなど問題を抱えていることもあります。参加型開発におけるNGOの役割について考えさせられるところです。この調査をNGOのあり方を省みる場ともして、当会の事業に生かしていければ、と思います。

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