2009年 |
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12月 [第49号] 教室建設と住民の能力向上を考え直す |
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代表理事 永岡 宏昌 当会が、ムインギ県(現 ムインギ東県)ヌー郡で地域住民と最初の教室建設を完成したのが2000年3月。それから現在まで、ヌー、ムイ、グニ郡で52教室を建設しています。建物が完成することも重要ですが、これらの建設の過程の中で、参加する保護者が、さまざまな経験をして、能力を向上していくことに着目してきました。 作業現場では、建設に関する技能や職人の監督、資材の管理などの力を付けることを意識した助言を行なってきました。また、作業量が多いため、一部の保護者の力ではなく、大多数の協力が必要であり、その合意形成に多くの時間を費やしました。合意後、短期間のうちに効率よく建設を行なえた学校がありました。また、作業の過程でトラブルが発生した際、保護者総会での話し合いを促し、解決や合意につながっていった学校がありました。そして、このような経験をふまえて、多くの小学校で、当会との事業終了後に自律的な教室建設が行なわれています。 事業実施の中で発生した課題に取り組む体験のなかで、保護者がさまざまな能力を向上させていくことは、有効な形であると考えます。しかし、課題として明確にならないと取り組まない面がありました。例えば、保護者が工面する職人費のことです。これについては自律的に資金の調達ができるのであれば、当会は介入しません。調達は困難と考えた学校の保護者は、当会へ借入れの相談を持ちかけてきました。その場合、保護者総会を開催し、当会の専門家が作業工程ごとに必要と推定される日数と職人数を提示します。これにより、保護者は職人費の総額と支払い時期、そして、資金調達のスケジュールを綿密に考えます。貸し出した学校もありますが、当会からの借入れなしで、職人費を賄えた事例が多く見られました。 今年12月に新たに開始した新設小学校の教室建設への協力事業では、「教室建設」とともに「保護者の学校運営能力向上」を目標としています。行政官や学校・保護者との事前の合意事項に、運営能力向上も入れます。そして保護者による建設資材の収集と並行して、学校開発計画の策定、課題の分析、合意の形成、建設技術・監督、資材や資金の管理などに関する研修会も開催しようと考えています。保護者が、これらの研修で理解を深めたことを、実際の教室建設の中で役立てる経験や、発生した課題を解決する経験を積んでもらえるとよいと思っています。 |
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9月 [第48号]地域の固有性に着目した環境保全と健康への協力 |
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代表理事 永岡 宏昌 ムインギ県では、2009年9月現在、4雨期連続した干ばつが進行しています。2年以上にわたって、ほとんど穀物の収穫がありません。彼らの大切な家畜であるウシが道端で死んでいる様子も目にしました。地域の人々のなかには、現金を求めて出稼ぎをする人もいますが、多くの人は地域に残って、食糧援助の獲得も含めて、生存するための努力を続けています。 このような干ばつは、近年、頻繁に起こり、住民の貧困化が進んでいます。気候変動の影響とも思われる環境の変化に対して、地域住民が日常生活に新たな工夫を導入することで、少しでも適応していけるよう協力ができないか、当会は模索しています。 その中で、2008年からムイ郡の辺縁の山肌の村々に着目しています。郡の中心から離れているため、行政サービスや援助などを通して、知識や技術を入手する機会が少ないこと。山間地のため、土壌流出による土地の荒廃が進みやすいこと。また、現金収入の機会としていた消し炭生産が、環境保全のために行政から禁止されたことなど、地域の固有性が高い問題が見られます。 このことは、村々の代表者を集めて、特定の知識・技術について集合研修を行ない、村に帰って住民に教えながら実践することを期待しても、地域の固有のニーズに合致しない可能性が高いことを意味します。 そこで、いくつかの村を特定して、当会の専門家やスタッフが訪問しています。貧困化から脱却するために必要な知識・技能を住民の関心もふまえて吟味し、それらに関する学習会を開催します。繰り返し訪問して、また、別の学習会を開催しながら、それらの知識や技術が家庭で活用されているか確認。さらに改善のための助言を行ないます。これらの学習会を通して、住民が、適正技術・有機農法・保健を中心とした生活に必要な知識・技能を習得することを目指しています。 環境保全(農業)として― ○土壌の保全・改良 ○有用樹木の育苗・植樹 ○畑と穀物倉庫の害虫制御 健康について― ○安全な水の確保・保管 ○野菜・野生食用植物の保存・活用 ○食品の衛生と栄養・調理 そして、次の問題などについても、取り組んでいきたいと考えています。 ○エイズ ○母性保護 (2009年9月発行 会報第48号より)
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6月 [第47号]新設の小学校での教室建設 |
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代表理事 永岡 宏昌
ムインギ県には、小学校まで遠いため、元気で我慢強い子どもは毎日通学できても、そうでない子どもにとっては通い続けることは難しい地域があります。2003年からキバキ政権の無償初等教育が進むなかで、新たに多くの子どもが小学校に通うようになり、そのような地域に、新設校が生まれるようになってきました。ケニアでは公立の小学校の教員の給与は予算から出ていますが、2002年まで校舎の建設は住民の役割でした。モイ政権末期では、財政難と援助の縮小のため、新たに教員を採用できないので、小学校はほとんど新設されませんでした。近年の動きは、全ての子どもたちが小学校に通えるためには重要です。新しい小学校の設置を希望する住民は、まず、幼稚園建設に着手します(幼稚園のみ希望するケースもあります)。幼稚園の建設用地を確保し、だいたいは泥壁の園舎を造り、教師を雇用し、開園します。教育事務所はその幼稚園を承認して、近隣の小学校校長を管理責任者に指名します。 幼稚園を発展させて小学校にするには、レンガとセメントで恒久教室を、少なくとも1つ、住民は完成させなければなりません。教室ができると、県教育局は公立小学校として認可して、校長を派遣します。住民は、その後も教室を建て続けることが期待され、開発にそって教員が派遣されます。しかし、1つの教室は何とか完成できても、建て続けていくことは住民にとって大きな負担です。2教室目の建設が進まなかったために、追加教員の派遣がなされず、1年生が全て留年となる事例もでてきました。 このような状況から、当会はグニ郡で、幼稚園から新小学校の認可に至った学校に対して教室建設への協力を開始しました。新設校は保護者数も少ないので、これまでより慎重に、準備の段階からスタッフ、専門家が、学校に通いました。そして、保護者との合意形成、現地で集めやすい資材の確認と資材の変更、運搬具の貸与、水タンクの供与、レンガ製作の技術指導、必要に応じての建築仕様の変更などを行ないました。従来は標準的な建築仕様を優先させていましたが、今回、専門家が地域の実情を詳細に確認して、それぞれの状況に合わせて、住民の作業量が軽減できる個別仕様の教室建設を始めました。現在、ゴーニ小学校とシュノー小学校の2校で進んでいる建設作業を検討し、今後のムインギ県での教室建設への協力のあり方を考えていきたいと思っています。 |
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3月 [第46号]2008年度を振り返り、2009年度について考える |
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代表理事 永岡 宏昌
2008年度は、施設拡充では、グニ郡3校での教室建設が完成。また、辺縁地にできた小さな新設校をはじめ、当会との建設を希望する学校が、資材収集を開始しました。 |