2003年 | ||
[第25号] 中間評価からヌー郡における事業終了に向けて | ||
代表理事 永岡 宏昌 2004年1月から3年間、国際協力機構(JICA)との草の根技術協力事業というパートナー契約に基づき、ケニア・ムインギ県ヌー郡において、住民参加に依拠した基礎教育改善事業を実施する予定です。これまでは、数多くの資金協力団体から個別の事業分野に対して、1年ごとの支援を受けていました。そのため、資金が確保でき、確実に事業が実施できると確証が持てた分野についてのみ、地域社会へ小出しに説明し、合意形成を行なってきました。例えば、「この1年間に3教室程度の建設への協力が可能である。しかし、次の年については分からない」と説明せざるをえませんでした。また、小学校の教室建設のための建設資材の供与は可能ですが、幼稚園舎は不可という、地域の人々にとっては納得のできない事態もしばしば発生しました。 一方、この草の根技術協力では、3年間の時間枠の中で、基礎教育に関わるさまざまな事業を地域社会へ事前に提示することができます。教室建設・補修、環境活動、保健活動、幼児育成などが選択肢となり、参加条件の合意をえながら進めていきます。保護者や教員に主体的な実施意欲がある小学校・幼稚園の教育環境の改善に協力していくという考え方はこれまでと同じです。 今回のヌー郡の中間評価で得られる情報は、これまでの当会の事業に対する評価であるとともに、この草の根技術協力を効果的に実施していくための参考資料であると考えます。 中間評価では、参加者とこれまでの当会の事業を振り返るとともに、現状の教育のニーズや教育環境改善に対する地域社会の期待などをつかみました。今後、事業の方向性を決めるヌー郡の地域社会や教育関係者との話し合いの中で、より客観的な状況認識を共有するための重要な資料となります。 そして、草の根技術協力が終了する3年後に、当会がヌー郡での教育事業を終了することを前提とした事業計画を、協働して策定したいと考えます。 この事業をとおして、3年後、地域社会や教育関係者の教育環境改善、ひいては地域開発全般に関する考え方や姿勢がどのように変化するでしょうか。この中間評価を新たな基準点として、その変化を測る基礎資料としても活用したいと考えます。 (2003年12月発行 会報第25号「活動の方向性」より) [第24号]事業の日常活動のつながりなどを中間評価 代表理事 永岡 宏昌 今年3月のCanDo総会で次のような意見が出ました。 「事業を実施する前のムインギ県ヌー、ムイ郡の状況と、事業を終了して成功裏に地域を離れることができる状況、すなわち出発点と終了点については明確になってきた。しかし、それらの中間点である現在の状況がどのあたりにあるのか。まだ出発点近くなのか、終了点近くに達しているのか−それについては明確になっていない」 当会は事業を開始する時から、地域を離れることを視野にいれた事業展開をめざしていました。1998年から集中的な取り組みをしたヌー郡の活動は、すでに 5年間にわたっています。そろそろ中間的な事業評価をする時期にきている、という認識は参加した会員に共通するものでした。そこで2003年度の計画に評価を加えました。 一方で、資金の面から転回点を迎えました。ヌー郡の環境活動・教育事業を支えていただいた団体による助成が、3年という予定通りに3月で終了。この事業の継続が必要と考え、他の助成団体に申請していたのですが、残念ながら交付とはなりませんでした。そこで当会からヌー郡の小学校へ環境活動への支援を4月からいったん休止。小学校は自立的に環境活動を行ない、当会は事業の今後の展開と新たな資金協力団体の検討を行なうことにしました。 現在、外部の専門家の協力を得て、ヌー郡において当会が実施してきた「教員の意欲を高める」ワークショップと環境事業に焦点をあてた事業評価を進めています。テーマは前回(会報第23号)でお伝えした、事業が教員の内発的な教授意欲の向上に貢献しているのか。学校の自立的な日常活動につながっているのか。それに加えて、保護者である地域住民のエンパワメントにつながっているかということなどです。調査方法は、参考となる統計資料の入手に始まり、関係者への統一した質問項目を基にした聞き取りが主となります。また、少人数のグループによる討論会を開き、その発言を収録しています。 地域で関わる人たちが事業をどう評価しているか、どのように変化したかということなどを発言から確認したいと考えています。さらに、そこから数値化できる指標を探し、今後の事業展開を通して改善していく目標値を設定し、最終的な事業評価を行なう際の基準のひとつとしたいと考えています。 (2003年9月発行 会報第24号「活動の方向性」より)
[第23号]当会の事業を「日常性」につなげる 代表理事 永岡 宏昌 2003年2月、当会の環境活動・教育事業の一環として、ヌー郡のムアンゲニ小学校で、校内理科研究発表会が開催されました。昨年12月の会報(第21 号)でお伝えしたように、これは、子どもたちが教員の助言を受けながら、周りの環境にあるものを活用して、実践的な理科の発表を行なうものです。学校での環境活動の活性化と理科教科の理解の促進を目指しています。 当会では、この事業を実施することで、さまざまな効果を期待し、工夫をしています。ひとつには、教員が、教授意欲を高める動機づけになること。教員が、他の教員へ自分たちの成果を教えることができるようになること。また、保護者が、発表会を参観する機会を創ることによって、学校の教育活動に参加するきっかけを提供すること。到達点は先になるでしょうが、教員、子ども、そして地域住民である保護者が、地域の環境を意識し、環境保全のための活動につながっていくこと。 当会の事業はどれも、外部からアイデア・行動様式・モノなどを持ち込み、地域の人々が参加することによって実施されます。これらの事業は、地域の人々からみると、非日常的なイベントでしょう。しかし、当会としては、その構成要素、アイデアなどが、地域の人々に価値のあるものとして認められることが重要だと考えます。そして、当会が関与しなくなっても、事業がその一部でも、日常的な活動のなかに組み込まれていくことを目指しています。 この環境活動・教育事業では、ひとつめの効果にあげたように、教員トレーニングと並行して、教員の教授意欲を高める内発的な動機づけにつながることを期待してきました。子どもの理解の向上に貢献するためか、教員の知的好奇心を刺激するためか、熱心に事業に参加する教員が確かに増えてきました。しかし、イベントである事業に関心をもつことと、日常的な教育活動へその熱心さが反映され、教授意欲の高い教員となることとは、直線的につながらないのではないか、という心配があります。イベントに熱心になる分、日常的な教育活動が逆におろそかになることもあるかもしれません。 このような視点から、当会の事業が、教員の日常の教育活動における内発的な教授意欲の向上に貢献しているのか、その評価を行なうことを検討しています。それにより、事業の質的な向上につなげたいと考えます。 (2003年6月発行 会報第23号「活動の方向性」より) [第22号]2002年度を振り返り、2003年度について考える代表理事 永岡 宏昌
2002年度は、総選挙に関連してか、県知事から郡の各行政官まで数多く異動しました。そのため、新任の担当官への事業の説明と合意形成に時間を費やすこととなりました。 (2003年3月発行 会報第22号より)
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