2001年 | ||
[第17号] 教育と保健のバランスが取れた幼児育成 | ||
代表理事 永岡 宏昌 当会の事業地であるムインギ県ムイ郡で、5歳未満の子どもたちの健康状態を調査したところ、多くの子どもたちが栄養不良でした。また、生活環境や習慣に起因するさまざまな慢性的な病気を抱えていました。 この地域には、看護士が1名ずつ配置されている小さな2つの診療所があるだけです。これらの施設では病気の治療が中心で、乳幼児の健康を守るための予防的な取組みは、最近予防接種が行われるようになっただけで、母子保健に関する包括的な活動はありません。また、いくつかの開発協力団体が、村レベルで保健ボランティアのグループ形成を試みましたが、成功していません。 一方、幼児に対する教育の面を見てみると、小学校就学前の子どもたちが関わる施設として、幼稚園があります。ムイ郡においては、ほとんどの幼稚園が小学校に併設され、3歳から6歳、場合によっては家庭の都合で10歳くらいまでの子どもが通っています。 現在、地域の人々や小学校教員は、幼稚園の管轄が教育省であるためか、子どもたちが小学校へ入学する準備としてアルファベットや数字、勉強する態度が身につくよう教育することを幼稚園に期待しています。しかし、子どもの健康が、全般的に厳しい状況にあるにもかかわらず、向けられる関心は十分でありません。そのことから、教育と並行して、幼稚園が子どもの健康を守り増進させるための仕組みを持つことが重要である、と考えます。 そのためには、幼稚園の教員が、保健に関する全般的な知識や技術を深め、日常の幼稚園活動に反映しなければなりません。基礎知識・技術が教員から保護者に伝えられること、それによって幼稚園の役割について地域社会の認識が深まることが重要です。このように幼稚園を拠点として、教育と保健のバランスがとれた幼児育成活動が形成されるには、教育省と保健省という縦割りの行政機構だけではむずかしいようです。当会のように教育と保健との両方で事業展開するNGOの協力も必要である、と考えます。 今後を考えるうえで考慮すべきことは、幼稚園教員への支援です。小学校教員と比べて10分の1程度の給与で働いていて、ほとんどの園で異なった年齢の多くの子どもたちをひとりで担当しています。そのため不満が募りやすく、孤立しがちです。教員たちをどのように勇気づけ、動機づけていくかにも取り組むべきだ、と考えています。 (2001年12月発行 会報第17号「活動の方向性」より) [第16号]小学校と保護者の関係を多角的に 代表理事 永岡 宏昌 担任との接点はなく、小学校における保護者の役割は労働力の貢献 当会がヌー、ムイ郡で協力している小学校の教室建設事業には、保護者が熱心に参加しています。参加の形は、膨大な数の石・砂やレンガなど地域で入手可能な資材集めです。毎週1回、保護者が学校に集まって、施設拡充のための労働を行なうという既存の制度をもとに、これらは実施されています。視点を変えて、その打ち込んでいる姿をみると、子どもの教育のために強制労働にかりだされている、ともいえそうです。 一方で、日本で行なわれている授業参観や担任の先生との保護者面談、家庭訪問などはみられません。学校との関係は、管理責任者である校長との関係に限定されています。子どもの教育について、担任など一般の教員と話し合える制度がないようです。保護者に求められる役割は、学校の運営経費の負担と、教室建設など施設拡充への金銭と労働力での貢献のように思えます。 環境と教室建設の協力活動によって両者の関係を多角的に 当会は、小学校への協力活動を通じて、この小学校と保護者との関係を多角化することをめざしています。現在、環境事業では、学校菜園や苗木畑の開設や植林などの活動を通して子どもたちの教科理解と環境意識の向上をはかっています。多角化の例として、この事業の運営について保護者と一般教員が話し合う場をもつことがあげられます。そこでは、自然環境や特定種子の発芽など地域固有の知識を、保護者から教員へ伝えることに取り組めると思われます。また、事業の一環として実施した理科研究発表会は、子どもたちが教育関係者などとともに保護者にも成果を発表する機会となりました。 教室建設事業の例では、セメントなどの外部から購入する建設資材の管理があります。これまでは校長に権限と責務が集中しがちでしたが、保護者にも共同の権限と責務があることを明確にするようにしています。それによって、保護者が校長に従属しない関係の確立につながるように、協力しています。 例にあげた活動などで保護者が実質的な参加を果たすことによって、教育への熱意があがっていくことを期待しています。それが小学校教育全般に反映され、教育環境の改善に貢献すると信じています。 (2001年9月発行 会報第16号「活動の方向性」より)
[第14号]2000年度を振り返り、2001年度について考える代表理事 永岡 宏昌
2000年度は、将来、国際開発協力の分野で活動することを希望している日本人を、インターンとして本格的に当会の事業に受入れました。業務内容を決める際には、実務経験の蓄積と、当会への協力とが両立できるように配慮。ナイロビ事務所の運営から、ヌー郡やスラムの事業、また受託事業まで幅広く協力をえて、今年度の事業を実施しました。 (2001年3月発行 会報第14号より)
|