三上貴代

「インターン期間を振り返って」


半年間のインターンの機会を得て、多くのことを学びましたが、考えたことなどをいくつか振り返ってみたいと思います。

私は民間企業勤務の期間が長かったこともあり、自分の概念が変に凝り固まってしまっているのではないか、という心配が自分自身の中にインターンを開始する前からありました。そのため、ナイロビ事務所で業務を開始してからも、私の発言や行動でこれまでCanDoのみなさんが積み上げてきたものを壊してはいけないという思いがあり、ケニア人スタッフに対しても、事業に関わる地域の他の人たちに対しても、こんな言い方でいいのだろうか、こんな対応でいいのだろうか、という心配ばかりが先立って、おっかなびっくり業務に携わっていたと思います。自分の行動が事業に負の影響を与えてしまわないかということに気をとられ、自分自身がどう考えるのかということにあまり目を向けていなかったように思います。民間企業で勤務していた際は、仕事の範囲がある程度決まっていて、業務経験から何が問題となるのか大体想像することができましたが、ここでは自分の想像を超えたところに、業務に影響を与える要因が存在することが多くありました。経験したことがないことをあらかじめ予測することは難しいので、これは仕方ないのですが、思いがけないことが起きたときにどのように対応するのかが問われるのだと思います。事業にとって、また自分にとって何が重要であるのかという軸を持ち、どう考えるかを常に問うということが必要なのだと今では思います。それがあれば、過度に臆病になる必要はなかったのではないかと思います。

CanDoでは、事業の計画、進め方などについて、スタッフ、インターン全員で会議を行います。その議論を通して、全員が地域の人々の社会的能力を向上させるにはどのようにしたら良いのか、ということを真剣に考えていることが強く感じられました。途上国での協力事業を行うといった場合、どんな状況でも何か協力することありき、という観点に立ってしまいがちではないかと思うのですが、事業の方針を話し合う中で、スタッフの方達が本当に地域の人たちの為になることとは何かを追求し、あえて介入しない、という選択肢も検討しているという姿勢に驚きました。私はといえば、事業の方針やみなさんの意見にそれぞれなるほどと感心するばかりで、私なりの意見というものを述べるには至りませんでした。しかしながら、この半年の間で多くの宿題をもらったと思います。会議や普段の会話の中で、事業の運営や開発に関して話し合われたことは、私の中で渦のように回っています。答えが出るのかどうか分かりませんが、今後こうしたことを考えながら過ごしていきたいと思います。

また、私の滞在した期間は2007年末に行われた大統領選挙後の混乱でケニアの治安が悪化した時期でもありました。各地で暴動などが起こっているという情報に触れ、普段穏やかに明るく生活しているように見えるこの国の人達の心の中には、長年解決されない問題が存在し続けていることを思い知ることになりました。政府による社会サービスが充分でない中で個人の努力で積み上げてきたビジネスや生活基盤が、暴力によって壊されていくという事実を知り、非常に残念に思うとともに、だからこそ自分達の生活を改善していく能力を高めることが望まれるのだということを再認識しました

最後になりましたが、このような機会を与えてくださったCanDoのみなさんに感謝します。スタッフの方々には、直接色々なことを教えていただいたばかりでなく、業務に対する姿勢を示していただいたことで、非常に勉強になりました。温かく迎え入れてくれたケニア人スタッフ、専門家との出会いも貴重な財産となりました。また東京事務所からも多くのご支援をいただきました。今回の経験で学んだことを心に留めながら、今後開発の世界に関わり続けていけたらよいと考えています。